【第33回】責任政党

【第33回】責任政党
突然ですが、今回のみ、当コーナー設立の日に記した下記の一文を撤回させて頂きます。
『諸々のテーマに対する極めて個人的な見解について、しかし論拠を極力ハッキリと示した上で、開陳させて頂きたいと思います』


本日朝刊で各社の選挙戦情勢が出ていました。
民主党の獲得議席は最大300までなら想定内でしたが、総議席480に対し320や330となると、もう冗談かマスコミファッショ国家化が完遂しているとしか思えないわけで、眩暈どころか絶望で心が真っ暗に。
というわけで、今回ばかりは理性より「恐怖心」に駆られて叫ばせて頂きます。
現行の民主党衆議院議員が115人に対して、300議席獲得した場合、引退・元職など考慮に入れなければ「185人」もの新人議員が誕生します。
その中には、自民系新人に多い「国会にも顔が利く」大物県会議員やら国会に呼ばれるような「高級官僚」は殆どいません。
修学旅行でしか国会に行ったことがないような、文字通り議院の右も左も分からない人間が――分かりやすくイメージすると前回「間違って」当選してしまった杉村太蔵議員のような人間――が国会議員の三分の一を占めるのです。
これが如何に国政にとっても、地方にとっても恐ろしい事態なのか。考えるだに恐ろしい。
今は景気の良い時じゃないんです。世界不況の真っ直中なんです。
国政を舐めているとしか思えません。


しかも民主党は国会議員を百人以上各官庁に送り込むといいます。
閣僚や党の幹部は送り込めませんから、その仕事は「ずぶの素人」の新人議員にさえ回ってきます。
「官僚=悪」と定義づける彼らが「政治主導」の名目で各官庁で何をするつもりか、大体想像はつきます。
そもそも天下り&渡りで甘い汁を吸っているのは、本当に極々一部だけです。
大多数の官僚は真面目で誠実であり、人のため、国民のためを考えて仕事をしています。
ですが、彼らが法律を、いえ本当に「長期的な国民の利益」を慮って、民主党の意見に異議を唱えた場合、どうなるでしょう? 
恐らくマスコミを利用して散々叩きまくり「政治的判断」として閑職に追いやり、自発的に辞職に追い込むでしょう。残るのは、民主党議員の主張の「イエスマン」だけです。
こんなものは改革ではなく、政治ファッショ以外の何物でもありません。


天下りに関して云えば「天下り団体を一掃すれば12兆円の無駄をなくすことができる」という大嘘答弁が未だに罷り通っている現状も恐ろしい。
勿論その「削減できる額」は民主党マニュフェストや会見では減少しているのですが、最初の報道で刷り込まれた多くの国民は未だに「天下り官僚の給与と退職金だけで12兆円の無駄」と信じてしまっているし、一部の地方の民主党ポスターにはそのように書いてあるそうで。
天下り先であるから原則民営化か廃止か国営」としている独立行政法人に関しては【第15回】で述べたように「小泉改革の結果」、団体そのもので削減できるものは殆どありません。
かといって民間で出来るものは大体「小泉改革」で民営化してしまっています。
となると再び「国有化」するしかないのですが、本当にそれで良いのですか? 
独立行政法人になったからこそ、官民共同研究が可能となった研究系機関は全てブロジェクトを停止しろ、と? 
どうも一般の皆さんには理解して頂けないのですが、公務員というのは制約の塊です。「あれもしちゃ駄目これもしちゃ駄目」。それが無駄に繋がっていると云えばその通りですが、それを元々要求したのはマスコミであり、国民です。
「何処か特定の個人・団体を優遇するな」という論法で。


無駄と云えば「公共事業」が槍玉に挙がります。
ですが、今日地方が疲弊したと云われる理由を根本的に遡ってみましょう。
その行き着く先は「小泉改革」による「地方交付税の削減」です。
自治体の必要経費そのものは住民サービスも絡むので簡単に削減できないため、真っ先に削ったのは公共事業でした。特に当時マスコミがイヤと云うほど「地方の無駄な公共事業」叩きをやり、国民も迎合していましたから、削減対象になりやすかったのです。
実際以前は日常的に見られた「年度末の集中道路工事」最近は見ることが減りましたよね?
ですが、事態はそれだけでは済みませんでした。
【第14回】で述べた通り、日本における公共事業は「雇用対策・失業者対策」の意味合いもあり、実際地方の農家の人々が晩秋から春先にかけて都会に出てきて公共事業に従事する、という図式があったのです。
で、その公共事業に携わる人々が減った結果、それまでその地方で「ある程度まとまった期間」留まり、住居費・飲食費など地域経済に落としていたお金まで減ったわけです。
勿論、本当に無駄な公共事業まで擁護する気はありません。
ですが「雇用対策&地方経済底支え」としての公共事業まで削減した結果が地方経済の疲弊であることを加味しないで民主党が「公共事業=悪」の図式を貫いた場合、より地方経済は疲弊します。
全国知事会東国原知事が基本的に自民党側に立っているのは(橋下知事の場合は例外。小沢一郎との会見後の態度豹変でしたから多分選挙後に絡繰りが分かるでしょう。地方改革特命大臣の枠でも貰えるのかな?)、長期的な地方分権云々より、民主党の「公共事業=悪」の図式が徹底されるのが恐ろしいのだと思われます。ガソリンの暫定税率廃止が実施されれば、地方の使える公共事業費も減らされますしね。


さて、そんな地方の心配に対して民主党地方分権し、財源も委譲するといっている。
民主党の直嶋政策調査会長は日経のインタビューで「国家公務員の技術職などを地方公務員として移行させる」とまで云っています。
事業費もない、人件費も増大するので当然予算も付けてくれないと地方は行き詰まります。ですからその手当もする、と云っています。
しかしそのバラ撒くお金は何処から降ってくるのでしょう? 
国民に対しては子供手当、高速無料化、ガソリンの暫定税率廃止で大盤振る舞い、地方にも財源をバラ撒く、医療費の抑制はやめる、後期高齢者医療制度は廃止する 等々。
……ひっょとして、本当に「困ったら紙幣を刷ればいいや」と思っているのではないかと疑いたくなるところですけれど。
自分の業界で云えば医療費の抑制は有り難いけれど、長期的に見ると自助努力を失わせるだけです(最近何処の病院も真剣にコストカット始めましたから)。
それよりも患者のモラル(夜間救急は本当に必要な人間だけしか使わない、医療スタッフに暴言・暴力を吐かない、医療訴訟問題にマスゴミを介在させない)を向上させることを国レベルで徹底して貰った方がマシ。
後期高齢者医療制度を廃止したら、途端に医療費が何倍にもなるお年寄りが続出することになるのですが、それが判明した時、マスゴミはそれを伝えてくれるでしょうか? 政府批判のダシに使っただけなので、そもそも制度によって支払いが減った人間の存在など知る必要もないと考えているのかも知れませんが。


とりあえず話が脈絡なくなってきましたので、ここらで今回は終えますが。
自分が民主党の政策で「一番納得できないところ」を一言で表すと。
「その政策によって不利益を被る人たちについての考慮が殆どない」という点。
民主党の政策による打撃を被る人たちが、もしくは国の行く末を危うくするとして反論の声を上げると「既得権益だ!=悪」の図式で封殺されます。
国民の大多数はとりあえず「自分の家庭」に直接の影響さえなければ、民主党のバラ撒き政策に万歳をするでしょう。
自民党がだらしないのも事実ですから「自民党にお灸を据える」という考えの人も多いでしょう。
ですが。
少なくとも今のままの民主党がマニュフェストの政策を実行した場合、そのツケは必ず国民に返ってきます。
勿論政治が今のままで良い筈はありません。
ですが、あまりにも現在の民主党の政策は過激で、一度実行したら取り返しのつかないものが多すぎます。
どう考えても、今の民主党政権公約は「責任政党」のそれではありません。
自民党にお灸を据えるつもりが、自分に蝋燭を突き立てていた」
こうなることが明白です。
しかも更に恐ろしいのは野党に転落した自民党が、更に次の選挙の際に「ひたすら国民受けの良い政権公約」を提出してきた場合。
その時にはこの国には「責任政党」がいなくなります。
それは紛れもなく国民にとっての「不幸」であり「悲劇」です。


……10年後のこの国が「まともな形をしてなかった場合」に備え、さて、何から始めるか真剣に考え始めた今日この頃です。