【第8回】臓器移植に際しての体験談 毎日新聞記者の資質

【第8回】臓器移植に際しての体験談 毎日新聞記者の資質
今回は極めて個人的な体験談からのご紹介。
先日臓器移植法案が改正され、脳死となった15歳以下の子供からの臓器提供が可能となりました。
同時に「臓器提供を事前に本人が意志表示していた場合に限る」という制限が撤廃されたため、臓器移植にまつわる様々な問題はさておき、日本でも臓器移植はそれなりに拡大していくことでしょう。


実は自分の勤めている病院は、かなり初期に脳死からの臓器提供を行っています。
「どうも臓器提供カードを持った患者さんが脳死状態になったらしいぞ」
その一報を受けてから、脳死確定に至るまで約1日半。
いよいよ正式な臓器提供に至るということで、その日は休日にもかかわらず出勤。
臓器提供に関する実務面はコーディネーターの方が全部仕切っているので、我々のお仕事はマスコミ対策。所定の時間になってマスコミ各社に「脳死からの臓器提供が行われることになりました。つきましては何時から説明会を行います」という内容のFaxを送ると、一斉に病院の電話が鳴りました。


とはいっても、電話で詳細を述べるわけにはいきませんので「それは会見の場で説明します」とだけ伝え、会見場のセッティングを開始。
とはいえ、自分は一兵卒ですので、病院にやってきた新聞記者を会見場に案内する役所。
一番最初に来たのは準地元新聞の女性記者、次は地元新聞の記者が。続いて全国紙の記者が続々とやってきました。
いずれの皆さんも、キビキビした動きをしていて、案内を終えた自分に「有り難うございます」と言葉を掛けてくれました……ただ一社の記者を除いて。
会見の時間が始まっても、自分はまだ後から記者の人が来るといけない、ということで、その場に待機。
会見が終わり「後片づけ頼む」と会見を終えた上司に云われ、会見場の後片づけに。
会見場に入った瞬間でした、その怒声が投げかけられたのは。
「おい、どうなっとるんや! 説明しろ!」
「はいっ?」
いきなり訳が分かりません。
自分は詳しい会見内容知らされていないし、会見場にもいませんでした。
「いえ、私はあなた方の案内をしていたので会見内容については分からないのですが」
「分からないんじゃ困るんだよ、分からないんじゃ!」
言葉だけ聞いていると、殆どヤクザです。
そもそもあなたをここに案内してきたのは自分で、その後、持ち場に戻っていたでしょう?
しかし今から思えば、会見場に案内した時にも鼻を括ったような態度でしたので、ろくに自分の顔すら見ていなかったのでしょう。
「おまえじゃ、話にならん。上司を呼べ、上司を!」
やっぱりヤクザです。


その場にいても怒声を投げかけられるだけなので、とっとと上司の所に行くと、この記者が怒鳴っている理由が判明しました。
「臓器提供者の名前と住所を教えろ! お前らには教える義務がある!」
これがその記者の主張だったのです。
絶句しました。
明確な臓器提供ガイドライン違反の強要です。しかも最も重大な違反です。
少しでも臓器提供法案の内容を知っていれば、そんな居丈高になれる筈がありません。
いや、今から思えば、この記者の脳内では
「法律の遵守<<<(越えられない壁)<<<スクープ」
の明確な図式が成り立っていたのでしょう。
その後も、全ての臓器が提供されるまでその記者はうちの上司にまとわりつき、臓器提供者の名前と住所を聞き出そうとしました。
勿論、そんな要求を飲むわけにはいきませんので、上司は最後まで跳ねつけました。
「ひどい記者がいるもんだ」
その場はそれだけで済みました。腹は立っていましたが。
しかし、この男の真正の屑っぷりが明らかになるのはこの後のことでした。


ある一定規模以上の病院の場合、患者さんには非常に申し訳ないことですが、一定程度の割合で医療ミスが発生します。
しかも民間の場合は示談が成立すれば新聞沙汰になりませんが、公的病院は全て公表されます(現にうちの県内の大規模公的病院は全て、自分が赴任してからの7年内で医療ミスによる示談が成立しています)。
うちもこの間に二度、医療事故を発表していますが、その際の記事が某一社だけ突出して扱いが大きい。
「偶然かな?」とも思いました。
うちの病院の外部監査の結果が発表された際のことが記事になるまでは。
普通新聞記事で外部監査の結果が載るなんて、よほどおかしな結果が出た時くらいです。
勿論うちの結果はそんなことはなく、その某一社だけが載せているのを見つけた時は首を捻りました。
そして記事を読んだ次の瞬間、上司に抗議の電話をかけるように談判に行くことに決めていました。
明確な捏造でした。
しかも自分の担当分野の領域で。
ですが、結局抗議の電話はかけられませんでした。
その記者は元は業界紙の記者で、当時から悪名高く鼻つまみ者だったのに、いつの間にかその全国紙の記者に成り上がっていたのでした。
しかも自分の気に喰わないことがあると、その相手への嫌がらせ記事をねちねち書くことで有名だそうで。
歯ぎしりしながら引き下がりましたが、その後もこの記者のねたねた報道は続きました。
……もっとも、その記者が転勤になってからも、その新聞社だけがやたら当院に対して悪意ある記事を書きまくっているのですが。


流石、公務員を性的に籠絡して機密を奪うスパイ、クラスター爆弾を機内に持ち込もうとして無辜の空港職員を爆殺したテロリストを育成したり、日本人=変態の記事を全世界に発信しても、その責任を取って社長になれる新聞社は末端の記者からして質が違いますね。
言論の自由を履き違えているこの新聞社の名前は、皆様ご存じ変態毎日新聞と云います。
変態毎日新聞の医者叩き、そしてその結果の産科壊滅についてはまた別稿にて。
(続く)