【第12回】報道しない自由−事務所費問題 小沢一郎氏の場合

【第12回】報道しない自由−事務所費問題 小沢一郎氏の場合
さて、前回事務所費問題を取り上げましたが、当時与野党問わず「ある意味で単純な」架空経費が問題となっている最中、ただ一人だけ全く異質の方向で事務所費問題が取り上げられたのが、前民主党代表小沢一郎氏です。


小沢氏の資金管理団体は「陸山会」といいます。
なんども報道で取り上げられているので名前は御存知な方が多いと思います。
その陸山会が小沢氏の事務所費として、平成17年分だけで計上したのが約4億万円超。
全政治家の中で独走のトップです。
当然その使い道は!? と調べてみたところ、同年世田谷区内に3億6500万円相当の土地・建物を購入していることが判明しました。
政治資金で不動産を購入する。
政治資金規正法以前に、市民の一般常識に照らすと、どう考えても何か間違っている気がしますが、小沢氏は涼しい顔であっさりと。
「秘書の住まいとして活用しており、個人資産ではない。政界引退または死亡後は後進の支援や日米・日中の草の根交流基金陸山会の資産を充てるから問題ない」
こんな詭弁で説明責任を果たしてつもりの小沢氏も大概ですが、この説明で納得するマスコミの方が更におかしいかと。
「政界引退又は死亡後は〜」と云っても、遺言状に書かれているわけでもないのに、あっさりその説明を受けて入れているのですから。
ですが、確かに小沢氏本人が当時主張した通り、政治資金規正法上も「事務所にするために不動産を購入してはいけない」などとは定めていないわけで。


しかもこの際、更に奇妙なことも分かって周囲を困惑させています。
というのは、小沢一郎政治資金団体が小沢氏本人から多額の借金(不動産購入費用に充てたと推定される)をしているのみならず、その利息を小沢氏に返済していたのです。
つまり。
「自分の政治団体」が「自分」から借金して不動産を購入。
その購入費用は政治資金規正法上の事務所費として申告。
そして購入資金を借りた「自分の政治団体」は「自分」に毎年多額の利息(3年で約1千万円)を払い込む。
奇妙な図式で、誰もがそれはおかしいだろうと思いつつも、結局明確な政治資金規正法違反には当たらないため、有耶無耶にされてしまいました。


しかしこの問題は約半年後の2007年10月、昨日取り上げた渡部恒三氏の事務所費問題とほぼ同時期に明るみに出た「とある事実」により、またも再燃。
その事実とは、陸山会が「経費」で購入した不動産を第三者に貸しだし、不動産収入を得ていたということでした。
つまり「不動産運用」で政治資金を運用していたわけで、これは政治資金規正法が定める“政治団体による資金の運用は預貯金、国債政府保証債券、元本保証のある金融機関への信託以外に限る”という規定に抵触します。
この前の事例とは異なり、今度は明らかに触法行為の疑いが強いわけですが、それでも小沢氏側は平然と反論します。
「不動産の借主はいずれも小沢氏の政治活動に密接にかかわる団体であり、無償で貸す方が問題である」と。
詭弁どころか全然説明になっていないこの説明。


「転売なら兎も角、賃貸は不動産収益に当たらない」
小沢事務所の見解はこのようなものだと推定されますが、税法上は疑いようもなく賃貸料は不動産収益に当たります。
ですが、更にとんでもないのは、結局この詭弁もどきが通ってしまったことで。
今ではネット界隈では思い出したように時折蒸し返されますが、政治家もマスコミも殆ど取り上げません。
結局、2008年6月。
政治資金規正法が「資金管理団体は取得済みの不動産を除き、新たに土地、建物を所有することを禁止する」と改正されることで、この問題は事実上終結します。
マスコミや他の政治家の追求能力のなさを露呈するだけの格好で。
(続く)