【第21回】子供手当と扶養控除廃止(3)

【第21回】子供手当と扶養控除廃止(3)
昨日【子供手当と扶養控除廃止】について、昨日分はモデルケースとして
【家族構成:妻(専業主婦)・子供2人】
のような家族構成の方をサンプルとして、それぞれ中学生以下の場合、高校生以上の場合を検討しました。
結果として
【子供が二人とも中学生以下の場合】(年収400万円想定)
→現在より45万8千円の減税
【子供が二人とも高校生以上の場合】(年収500万円想定。年功序列給与体系前提)
→現在より31万7750円の増税
このような両極端な試算結果が出たのですが、本日は
【子供がいない夫婦(妻は専業主婦)】のケースについて見ていきましょう。
なお、この《専業主婦》には年収103万円以内のパート従業者も含みます。


【モデルケース3】
【年収:400万円】
【家族構成:妻(専業主婦)のみ】
【生命保険料控除:最大額5万円と想定】
社会保険料控除:47万円と想定】
〔両案共通〕
《給与所得控除額》=400万円×20%+54万円=134万円
《給与所得》=400万円−134万円=266万円


【現行税額】
所得税算出〕
《総所得》=266万円《給与所得》−38万円《基礎控除額》
−5万円《生命保険料控除》−47万円《社会保険料控除》
−38万円《配偶者控除
=138万円
所得税
 62万円×5%=6万円
〔住民税算出〕
《総所得》=266万円《給与所得》−33万円《基礎控除額》
−3万5千円《生命保険料控除》−47万円《社会保険料控除》
−33万円《配偶者控除
=149万円5千円
《住民税》
 149万円5千円×10%=14万9500円
【負担額合計】
 6万1千円+14万9500円=20万9500円


民主党案】
所得税算出〕
《総所得》=266万円《給与所得》−38万円《基礎控除額》
−5万円《生命保険料控除》−47万円《社会保険料控除》
=176万円
所得税
 176万円×5%=8万8千円
〔住民税算出〕
《総所得》=266万円《給与所得》−33万円《基礎控除額》
−3万5千円《生命保険料控除》−47万円《社会保険料控除》
=182万5千円
《住民税》
 182万5千円×10%=18万2500円
【負担額合計】
 8万8千円+18万2500円=27万0500円


〔現行税額〕−〔民主党案〕=−6万1千円
以上の試算により【子供がいない夫婦(妻は専業主婦)】の場合の増税額は【6万1千円】と導き出されました。
再び岡田幹事長の発言を引用します。
『子供がいない65歳未満の専業主婦世帯のうち納税世帯では税額が若干増える。
但しその割合は全世帯の4%未満であり、給与収入500万円の世帯の減収額は同3.8万円である。 』
それでは、岡田幹事長の云われる給与収入500万円で計算してみましょう。


【モデルケース4】
【年収:500万円】
【家族構成:妻(専業主婦)のみ】
【生命保険料控除:最大額5万円と想定】
社会保険料控除:58万円と想定】
〔両案共通〕
《給与所得控除額》=500万円×20%+54万円=154万円
《給与所得》=500万円−154万円=346万円


【現行税額】
所得税算出〕
《総所得》=346万円《給与所得》−38万円《基礎控除額》
−5万円《生命保険料控除》−58万円《社会保険料控除》
−38万円《配偶者控除
=207万円
所得税
 (207万円−9万7500円)×10%=19万7250円
〔住民税算出〕
《総所得》=346万円《給与所得》−33万円《基礎控除額》
−3万5千円《生命保険料控除》−58万円《社会保険料控除》
−33万円《配偶者控除
=218万円5千円
《住民税》
 218万円5千円×10%=21万8500円
【負担額合計】
 19万7250円+21万8500円=41万5750円


民主党案】
所得税算出〕
《総所得》=346万円《給与所得》−38万円《基礎控除額》
−5万円《生命保険料控除》−58万円《社会保険料控除》
=245万円
所得税
 (245万円−9万7500円)×10%=23万5250円
〔住民税算出〕
《総所得》=346万円《給与所得》−33万円《基礎控除額》
−3万5千円《生命保険料控除》−58万円《社会保険料控除》
=251万5千円
《住民税》
 251万5千円×10%=25万1500円
【負担額合計】
 23万5250円+25万1500円=48万6750円


〔現行税額〕−〔民主党案〕=−7万1千円
増税額は収入に比例して拡がって【7万1千円】となりました。
それにしても。
岡田幹事長の云う『増税額は3万8千円程度』という数字に近い数字がどうしても出て来ないわけですが、一体どんな計算がしてあるのでしょう? 
しかし優秀な厚生官僚だった岡田幹事長が、こんな重大事で計算を間違える筈がありません。
つい一週間程度前から税金の計算方法を勉強しだした自分が間違っているに違いないのです。
どうか自分の誤りを指摘して、岡田幹事長の仰る数字が正しいことを証明してください。
お願いします(注.皮肉だけではなく割と本気で)。


ちなみに。
諸種の条件を吹っ飛ばし【控除の削減額だけ】で物凄く簡単に計算する方法で試算してみると。
【所得金額】が195万円以下で、所得税率が5%の区分に入る方の場合
所得税の《配偶者控除》【控除額=38万円】×5%=1万9千円
住民税の《配偶者控除》【控除額=33万円】×10%=3万3千円
【負担額合計】1万9千円+3万3千円=5万2千円
ということで、それなりに近い数字が算出されます。
更に参考までに。
所得税区分が10%のライン(195万円超330万以下)に入る所得の方だと
【負担額合計】3万8千円+3万3千円=7万1千円
所得税区分が20%のライン(330万円超695万以下)に入る所得の方だと
【負担額合計】7万6千円+3万3千円=10万9千円


基本的にこの数字から大幅な変更があると思えないのですが(上記モデルケース参照。控除がなくなった結果、税率区分が上方修正される方はそれなりに変化しますが)……岡田幹事長の試算は本当に不思議です。 
ひょっとすると、イオンの御曹司であり『2020年までに温暖化ガスを25%削減(1990年比)する』ことを民主党マニュフェストに記載した岡田幹事長にとっては「たかが10万円くらい」増税に入らないのでしょうか?
確かにそうかも知れませんね。
第16回で解説した通り、民主党のマニュフェスト通り『2020年までに温暖化ガスを25%削減(1990年比)する』を貫くと【一世帯当たりの負担額は年間36万円(可処分所得22万円、光熱費14万円)】になるのですもの。
その三分の一以下の金額など、歯牙にもかけないに違いありません。


つまり。マニュフェストに書いてある通りのことだけでも。
子供のいない年収400万円の夫婦(奥さんは専業主婦)にとっては、6万円+36万円=【42万円】の増税となるわけです。
たとえ子供が二人とも子供手当を貰っていても、差し引きすると【9万8千円】しか恩恵がなくなります。当然子供が一人しかいない場合は、増税です。
ここまで明確にマニュフェストに増税が謳ってあるにもかかわらず、それを報道しないマスゴミ(新聞は経済界の言い分として載せていますが、テレビでは殆ど流れていない筈)というのは、一体なんなのでしょうか? 
(続く)