【第23回】租税特別措置

【第23回】租税特別措置
民主党マニュフェスト要旨より
【政策各論】
〈1〉無駄遣い
 ▽役割を終えた租税特別措置は廃止し、必要なものは恒久措置に切り替え。
この租税特別措置とは一体どんな制度か、というのが本日のテーマです。


大雑把に言えば、租税特別措置というのは現行税法の特例部分に当たります。
昨年大きくクローズアップされた、石油にかかる暫定税率並びに自動車重量税率の特例措置がそれに当たり、この場合は「本来の税法上の税率」より、特例法により税率が上増しになっているわけです。
昨年、一時的にガソリンが安くなったのは、この租税特別措置が時限立法だったため、税率を維持しようと思えば特例措置の失効までに再延長しなければならなかったのに、国会が空転して延長措置が期限までになされなかったらです。
この事例だけを見ると「租税特別措置」というのは、税金を上げるためだけの悪法に見えますが、実際には減税措置のための制度の方が多いのです。
具体的に数値を上げると、2009年度予算だと【増税分】に当たる特例措置が【2.3兆円】なのに対して【減税分】に当たる特例措置は【7.5兆円】に及びます。
【減税分】に当たる代表格が【住宅ローン減税】【研究開発促進税制】【中小企業等投資促進税制】【ナフサ(粗製ガソリン)への免税措置】などになります。


で、実を云えばこの制度、財務省や政府税調にとっては目の上のたんこぶなのです。
本来「特例措置」として減税している分が、一部完全に固定化しており、税の公平性や簡素化に疑義を生じさせている点から、正直なところ、特例措置で処理するのではなく、増税分・減税分を問わず、恒久処置に変更したがっているのです。
これがなかなか実現しないのは、明らかに政治と利害関係業者との調整がつかないからで、この点で民主党マニュフェストでこの改善を謳うのは全く間違っていないのです。
ですが、民主党の場合「改善する目的」が明らかに本末転倒となっているのが問題なわけで。

民主党は6日、衆院選政権公約に掲げている、一部の税金を例外的に増減税している租税特別措置見直しについて、継続年数、適用件数、政策効果の三つの尺度から判断していく方針を固めた。
政権を獲得した場合、現行の減税措置約300項目などを調べ、2011年度税制改正で少なくとも3割以上の廃止で1兆円超の財源を捻出したい考えだ。
一方、 優遇策を失いかねない業界団体などは民主党の動きに神経をとがらせている。
財務省試算では、08年度の租税特別措置は減税分が約7・5兆円、増税分が約2・3兆円で、差し引き約5・2兆円の減税となっている。
民主党は「利益誘導的な措置が多い」と批判しており、
〈1〉時限措置にもかかわらず長期間継続
〈2〉適用件数が少ない
〈3〉政策的効果が乏しい――の3原則に基づき、是非を判断する。
例えば、住宅ローン減税(8240億円)は「最高控除額が大きすぎる」、
企業の研究開発を後押しする試験研究費の特別控除(6510億円)も「どの程度の効果があるのか不明」などと指摘している。
民主党は、減税適用者に明細報告を義務づける「租税特別措置透明化法案」を遅くとも10年の通常国会で成立させ、実態調査を急ぐ方針だ。
11年度から廃止する方針を示している所得税の扶養控除、配偶者控除分と合わせ、2・7兆円分の財源を確保したい考えだ。
しかし、産業界からは「住宅ローン減税は確実に住宅需要を下支えしている」(住宅業界)、
「低燃費自動車や省エネ関係の減税廃止は、広く産業界に影響が出る」(自動車業界)などの声が出ており、見直しの動きが本格化すれば反発が強まりそうだ。』


民主党が明らかにおかしいのは、子供手当、高速道路無料化、ガソリンの暫定税率廃止に伴う税収不足の穴埋めのために、現行ある各種減税措置を撤廃しようとしていること。
財政均衡のため特例措置を廃止し、税収不足に当てます』なら、話は通っているのです。
後はその特例廃止により、明らかに景気に悪影響が出る部分や一部企業に過重な負担になる部分については各種施策を施していく、というのがまっとうな流れでしょう。
ですが、彼らの論理はそうではありません。
「国民にばらまく金が足りない。そうだ、特例措置を廃止して財源にしちまえ」
彼らが如何に景気のこと、日本の未来のことを考えていないか分かるのは、上の記事でも指摘されている様に真っ先に廃止対象に上げられたのが【住宅ローン減税】と【研究開発促進税制】だったことで明らか。
景気の底支えをしている住宅ローン減税、未来への投資である研究開発促進税制の廃止。
普通の経済感覚をしていたら、こちらに手をつけるのは最後の手段の筈です。
とりわけ、後者については「温暖化ガス25%削減」を掲げる民主党マニュフェストを真っ向から否定するものに他なりません。新しい技術の開発なくして、どうして温暖化ガスを25%も削減できるのでしょうか?
それでいて、ガソリンの暫定税率廃止&高速道路無料化で温暖化ガスを増大させようとしているのですから、彼らの論理は完全に破綻しているとしか思えません。


それにしても。
毎度のことですが、新聞はまだある程度この辺についての疑問を提起しますが、テレビでは殆ど報道されないことに絶望を感ぜざるを得ないわけですが。
国民が「子供手当万歳、ガソリンの暫定税率撤廃万歳、高速道路無料化万歳」とやっている裏で、確実に日本の経済力が削がれていくことになるのを、マスゴミは黙って見ているつもりでしょうか? その時にテレビ局にスポンサーが残っているのでしょうか?
そのあたりだけは楽しみといえば楽しみな未来図なのですけれど。
(続く)